日本鍼灸医学 経絡治療・基礎編
−増補改訂版−
2008年8月9日発刊 会員頒布用
執筆者(順不同)

 岡部素明、岡田明三、首藤傳明、池田政一、相澤 良、樋口秀吉

 改訂者
 大上勝行、山本文弘、菊池達矢、馬場道啓、大木健二、中根 一、
 戸田隆史、船水隆広、橋本 厳、阿江邦公

序(基礎編より)
日本鍼灸医学基礎編は11年前に出版され多くの方々にお読みいただき、ご指示やご批判を頂戴した。鍼灸は飛鳥時代に日本に入ってきて以来一貫して中国からの影響下にあった。江戸時代に入り杉山和一が管鍼法を考案して以来、技術的には日本のオリジナルができたが理論は2000年間中国の鍼灸理論の上に行われていた。昭和に入り明治以降の西洋医学主体の影響で鍼灸は衰退の一途をたどっていた。そんな中、柳谷素霊を中心に故岡部素道、故井上恵理らにより経絡治療という臨床治療方式が現れた。中国伝来の鍼治療理論を日本の鍼に適した浅刺により行う治療法が考案された。しかし、治療体系は個々の先生により差があり、それに伴い理論にも相違があった。そのような現状を打破すべく、故岡部素明前会長が教科書的な書物の必要を訴え、経絡治療学会の英知を集結して日本鍼灸医学基礎編を完成させた。それ以来11年を経て改訂版を出版する運びとなった。改訂作業は将来経絡治療学会を担う人を人選し、新鮮な目線で改訂をした。
日本鍼灸を世界に発信するためには核となる理論と臨床体系、それを具現化する鍼灸術がなければならない。日本鍼灸は長年、医術としてのテクニックは蓄積してきたが、そのテクニックを理論化することをしてこなかった。
基礎編は脈診、腹診を実践に近い形でまとめてあり、日本鍼灸の特色である患者に「触れる」ということがわかりやすく記載されている。江戸時代以降視力障害の鍼灸師が指頭感覚で皮膚の権限状態を見て診断治療を行ってきた。結果として鍼灸治療で一番大事な「触れる」ということが日本鍼灸の特色となっている。本書は診断と治療に触れるということを前提とした考えが盛り込まれている。本書が日本鍼灸のスタンダードとして普及することを望む。
2008年5月吉日 経絡治療学会 会長 岡田明三