日本鍼灸医学 経絡治療・臨床編
2001年6月発刊 会員頒布用
 執筆者(順不同)
 岡部素明、首藤傳明、池田政一、岡田明三、相澤 良、樋口秀吉、浦山久嗣、金子宗明
 毛利匠成、木戸正雄
序(臨床編より)
経絡治療学会は先に『日本鍼灸医学 経絡治療・基礎編』を上梓し、ここに『日本鍼灸医学経絡治療・臨床編』を上梓することとなりました。この2冊によって、日本の鍼灸医学は体系化できたと自負いたしております。
 1990年の経絡治療創設50周年記念講演会の時に、「これで良いのか経絡治療」と、故・岡部素明会長が警鐘を鳴らしました。そうして、過去50年の間、築きあげてきた成果を土台として、教科書となりうる書物を創ることになったのです。
 このプロジェクトには経絡治療学会の多くの先生方に参加していただきました。すべて開業しておられる先生方ですが、5月の連休や正月休みを返上して問題点の洗い出しや「証概念」「四診」「病理病証」「治療法則」等意見を出し合い、その一つ一つに統一見解をまとめ上げて参りました。苦節10年、故・岡部素明会長の強いリーダーシップによって、ついに出版の運びとなりました。
 昨年より世の中の規制緩和の流れによって、鍼灸学校が新設されるようになりました。5年後には資格取得者が毎年5000人規模まで増えることとなります。想像できないほどの競争になると予想できます。鍼灸を志す者は学と術の研鑽に励まなければ成りません。
 現在日本の鍼灸は「西洋医学的な鍼灸」と「東洋哲学的な鍼灸」それに「経験にたよる非体系的な鍼灸」などで、統一された鍼灸は存在しません。西洋医学は健康保険の枠の中(この善悪は見解の分かれるところではあるが)でスタンダードが存在しています。そこで、鍼灸にスタンダードは必要なのでしょうか?となります。
(社)全日本鍼灸学会では、鍼灸の国際化にあわせて日本鍼灸の必要性を訴えていますが、まとめ上げるのに大変苦労しています。経絡治療学会では統一した病態把握をし、証による治療が行われることを目標とし、治療の方法は個人の手技を尊重することにしています。治療手段の鍼法と灸法には個人のオリジナリティーが重要と考えております。
 経絡治療学会では『日本鍼灸医学 経絡治療 基礎編・臨床編』をスタンダードとして各講習会、学術大会、経絡治療夏期大学などで、広く普及して参りたいと考えております。また、諸外国にも「日本鍼灸医学」として発信して行きたいと思います。
 『日本鍼灸医学 経絡治療 基礎編・臨床編』の刊行により、「日本鍼灸医学」のスタンダードはできあがりました。今後は建設的なご意見やご批判を頂き、完成度を高めていく所存です。最後に故・岡部素明会長に感謝の気持ちを込めて「ありがとうございました」と申し上げます。
2001年1月  経絡治療学会 会長 岡田明三